モクモク新聞は、全国有数の家具産地・旭川から、ものづくりやデザインが好きな人に向けて、ものづくりの“ワクワク”を届けるWEBメディアです。
記念すべき第1回は、CondeHouse(以下カンディハウス)さんに取材協力いただき、ロングセラー椅子「ルントオム」を通して、ものづくりの世界を覗いてみました。
カンディハウスとは
1968年に長原 實(みのる)によって創業。北海道旭川に本社と工場があり、全国にかまえるショップは8店舗。創業当時から世界に通用する家具づくりを目指しており、社名「Conde」は「どの国の言葉にも該当しない音」に由来するという。現在では海外にも現地法人や販売契約店を展開している。
取材協力
山下 陽介さん(写真左)
技術開発本部 本部長
岡口 歩生さん(写真右)
デザイン企画本部 本部長
ルントオム
――「ルントオム」はどんな椅子ですか。
ルントオムはカンディハウスの技術の発展とともに歩んできた椅子です。デザイナーはスウェーデンのスチウレ・エングさん。1973年の登場以来、木材の使い方や座り心地を追求し続け、リデザインを繰り返してきました。2023年にはルントオムの50周年を迎えます。
――デザインのルーツはあるのでしょうか。
創業者の長原がヨーロッパで修行していたときに出会った椅子がルーツといわれています。ルントオムは、長原が「世界から受け入れられること」を意識してスチウレさんに依頼したデザインなのです。
――先ほど「技術の発展とともに歩んできた椅子」とおっしゃられましたが、新旧デザインで具体的にどんな違いがあるのですか。
いろいろありますが、たとえば、椅子をクルッと裏返すとすぐに違いがわかりますよ。
ご覧のように、初期のルントオムは、座部の裏面と「ヌキ」がピタッとくっついていますよね。
一方で現在のデザインでは、あえて隙間を空けています。座り心地をより快適にするためにそうしました。隙間があることで、座ったときに座面に“しなり”が生まれ、衝撃を吸収しやすくするのです。
―― よく見ると木材の使い方にも違いがありますね。
はい。ルントオムの歴代モデルを見てみると、当時の木材事情を伺い知ることができます。
昔は今よりも木材の供給が豊富でしたから、天然木をそのまま切り出して椅子のパーツに使っていました。
一方で現代のルントオム(写真一番下)は、薄くスライスした天然木を重ねて成型しています。これは、昔よりも天然木の供給量が少なくなったことに加えて、無駄なく木を使い切る技術の発達が関係しているのです。技術発達の成果は、椅子の強度にも表れています。旧モデルよりも、現行モデルのルントオムのほうがさらに頑丈になっています。
―― ルントオムには技術発展の歴史が刻まれているのですね。
はい。ルントオムの歴代モデルには、当時のカンディハウスの木工技術が惜しみなく使われています。木材事情の変化や、他の家具製作で技術的なチャレンジをしたことが、結果的にカンディハウスの技術をさらに高めてくれました。そうして得た新しい技術を、ルントオムのリデザインに応用しているのです。
―― デザインによって椅子づくりの難易度が違うといわれていますが、ルントオムの難しさはどれくらいですか?
実は難易度はそこまで高くありません。ルントオムはシンプルな部品で出来ていますが、フィンガージョイントやほぞ組、成型技術など多くの木工技術でつくられています。いうなればルントオムは、木工技術の粋が詰まった椅子なのです。
―― 最後に、あらためてルントオムとは?
木材事情の変化、技術発展の過程、木工技術の基礎。ルントオムは、これらすべてが凝縮されたカンディハウスのシンボルです。
あとがき
ルントオムは、たびたびリニューアルしているものの、デザインの本質は半世紀にもわたって受け継がれ、現在でも人気のロングセラー製品として親しまれています。デザインの力をひしひしと感じました。はじめてルントオムに腰かけたときの感動は、なかなか言葉では伝えきれないところがあります。みなさんもぜひ、ショップや展示場で見かけたときは、ルントオムに触れてみてください。
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カンディハウス公式サイト