
木材の「含水率」は、住宅や家具、DIYにおいて強度や仕上がりを左右する重要な指標のひとつです。使用する木材の含水率が適切でないと、反りや変形などのリスクが高まります。
しかし、「含水率」という言葉は知っていても、具体的な意味や正しい見方まで理解している方は多くありません。
そこで本記事では、含水率の基本知識から、建築基準法やJAS規格で定められている基準値まで詳しく解説します。反りや割れなどのトラブルを防ぎ、質の良い木材で安心して家づくりやDIYをしたい方は、ぜひ参考にしてください。
木材の含水率とは?樹種や用途による違い
木材の含水率とは、木材に含まれる水分の割合を示す指標で、「乾量基準」と「湿量基準」の2種類があります。日本の建築や木材の取引では、主に乾量基準含水率が用いられており、次の式で算出されます
- 含水率(%)=(水分を含んだ木の重さ – 乾燥させた時の木の重さ) ÷ 全乾状態の木の重さ × 100
含水率の測定方法は、以下が一般的です。最も正確に含水率を測定できる方法は「全乾法」ですが、木材を乾燥させるための機械が必要だったり、木材を切り出したりと時間も手間もかかります。そのため、水分形を用いた簡易的な測定方法がよく使われています。
測定方法 | 特徴 | |
全乾法 | 木材から試験片を切り出して含水率を測定する方法木材を切る必要があるが、ほぼ正確な測定が可能 | |
携帯型の水分計を使用する方法 | 高周波式水分計 | 高周波の電界を木材に照射し、このときの電気容量の変化から含水率を測定する方法木材を切り出す必要がなく使いやすいが、密度や樹種の影響を受けやすいため補正が必要 |
電気抵抗式水分計 | 木材に針を打ち込み、電圧をかけたときの電気抵抗の値から含水率を測定する方法木材に針の跡がつくほか、測定できる範囲は針が届く部分のみのため、内部の含水率は分かりにくい | |
マイクロ波透過式水分計 | 木材にマイクロ波を照射し、水分による吸収量の変化から含水率を測定する方法中心部を含めた内部の含水率を測定できるが、装置が大型で、木材の比重・厚みの設定が必要 |
なお、木材に含まれる水分は、木材の細胞の隙間に含まれる「自由水」と細胞壁の内部に浸透する「結合水」に分かれます。
本来、伐採直後の木材は自由水と結合水がたくさん含まれている状態です。乾燥させると、まずは自由水から抜け、自由水が抜け切った後に結合水が乾燥し始めます。木材の含水状態は乾燥の進み具合によって、次の4つの段階に分けられます。
状態 | 特徴 | 含水率(目安) |
生材(せいざい) | 抜粋直後の木材で、自由水・結合水を多く含んでいる | 約60~100% |
繊維飽和点(せんいほうわてん) | 自由水がほぼ抜け切り、結合水のみが残っている状態の木材 | 30%前後 |
気乾材(きかんざい) | 周囲の湿度とつり合いが取れた状態の木材 | 15%前後(日本の気候を基準にした場合) |
全乾材(ぜんかんざい) | 自由水・結合水のすべてが失われ、ほぼ完全に乾燥した状態の木材 | 0% |
生材の含水率は樹種によって異なるほか、同じ樹種でも「辺材」と「心材」によって違いがあります。
樹木の幹は外側の部分で水分を通しており、木材としては、この部分が「辺材」にあたり含水率が高いです。一方、内側の「心材」は水分をあまり通さず、含水率は低くなる傾向にあります。
木材の含水率は強度や仕上がりに影響する?
木材の含水率は、強度や仕上がりに大きな影響を与えます。一般的に、木材は含水率が繊維飽和点(約30%)以下になると強度が増します。
しかし、乾燥しすぎて含水率が5%以下になると細胞壁が収縮し、変形や割れ、反りが生じやすくなります。
一方、含水率が高ければ高いほど柔らかく、腐朽菌やカビ、シロアリによる被害が起こりやすくなるほか耐久性も低下します。そのため、木材は用途に応じて適切な含水率で使用することが重要です。
適切な木材の含水率基準と目安
木材の適切な含水率は、使用する場所や用途によって異なります。一般的に、建築の柱や梁などの構造用製材には15%以下、エアコンや季節の関係で乾燥しやすい室内の内装や家具材には10~15%が望ましいとされています。
そのほか、法律・規格などでも、木材の用途に応じた含水率の基準が定められています。
法律・規格で定められた含水率の基準(JAS規格、建築基準法)
木材の品質を保証するJAS規格(日本農林規格)では、木材の用途に応じて4つの区分ごとに含水率の基準が定められています。
【仕上げ材】
用途 | 区分 | 含水率基準 |
構造用製材(柱、梁、桁など) | SD15 | 15%以下 |
SD20 | 20%以下 | |
造作用製材(階段材、壁面材、カウンター材、床材など) | SD15 | 15%以下 |
SD18 | 18%以下 | |
下地用製材(壁・床・天井などの下地材) | SD15 | 15%以下 |
SD20 | 20%以下 |
【未仕上げ材】
用途 | 区分 | 含水率基準 |
構造用製材(柱、梁、桁など) | D15 | 15%以下 |
D20 | 18%以下 | |
D25 | 25%以下 | |
造作用製材(階段材、壁面材、カウンター材、床材など) | D15 | 15%以下 |
D18 | 18%以下 | |
下地用製材(壁・床・天井などの下地材) | D15 | 15%以下 |
D20 | 20%以下 |
仕上げ材…乾燥後、寸法仕上げした製材
未仕上げ材…寸法仕上げしない製材のことで、再加工が前提
また、建築基準法では、建物の安全性や耐久性を確保するため、使用する材料にさまざまな規定が設けられています。
特に、柱や梁などの「主要構造部」に使う木材の品質については、「国土交通大臣の定めた基準」に適合していることとされています。
ここでいう「国土交通大臣の定めた基準」とは、JAS規格などで定めた「全乾法による含水率15%以下」を意味しており、主要構造部材にはこの条件を満たした木材を使用する必要があります。
参照:農林水産省「製材の日本農林規格」、法令検索 G-GOV「建築基準法施行令|第四十六条(構造耐力上必要な軸組等)」
変形リスクの低い木材は含水率15%以下
木材の含水率が15%以下になると、乾燥による収縮や変形のリスクが大きく減少します。日本の気候における気乾状態では含水率15%前後が目安とされており、この水準まで十分に乾燥させた木材を使用すれば使用後の反りや割れ、歪みなどのリスクを低減できます。
含水率が15%を超える木材は、水分の蒸発により収縮し、反りや割れが生じたりする可能性があります。また、含水率が低すぎると、強度が低下したり加工時に割れやすくなったりする場合があります。
さらに、設置後に空気中の湿気を吸収して、逆に膨張や変形が起こるリスクもあるため、適度な含水率を保つことが大切です。
まとめ
木材の含水率は、強度や仕上がり、耐久性に大きな影響を与える重要な指標です。反りや割れなどのトラブルを防ぎ、長く安心して使える家づくりや家具制作を目指すためにも、用途に応じた適切な含水率の木材を選びましょう。
日本の気候では、含水率15%前後が重要な目安です。法律やJAS規格で定められた基準値も参考にしながら、良質な木材を選びましょう。
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