
住宅をおしゃれに仕上げる素材として、木材を使用した外壁の人気が高まっています。天然素材ならではの温かみのある風合いと、環境に優しい点は木材ならではの魅力です。
ただし、外壁に使う木材を選ぶ際は、見た目だけではなく、強度や耐久性に着目することも重要です。後悔しない家づくりを実現するためにも、外壁に使う木材の特徴をしっかり理解しておきましょう。
今回は、旭川家具に精通する木工のプロ「旭川木工センター」が、外壁に使用する木材の種類を徹底解説します。それぞれの木材の特徴やメリットを把握し、理想の家づくりを目指しましょう。
外壁に使われる木材の種類と特徴
木造住宅の外壁の仕上げには、さまざまな種類があります。よく見かけるのは「サイディング張り」ですが、ほかにも「モルタル塗装」や「タイル張り」などの外壁材があります。
工法 | 特徴 |
---|---|
板張り | 外壁の仕上げに木材そのものを貼り付ける工法。木材の種類には、無垢材・集成材・羽目板などがある。 |
モルタル塗装 | 砂とセメント、水を混ぜ合わせたモルタルを外壁の下地や仕上げに塗る工法。 |
サイディング張り | 工場で製造したパネル状の外壁材を貼り付けていく工法。窯業系・金属系・樹脂系・木質系などの外壁材がある。 |
タイル張り | 外壁の仕上げにタイルを貼り付ける工法。タイルの種類は、陶磁器・コルク・プラスチック系など。 |
ALC | コンクリートの一種で、内部に気泡を含み、素材も比較的軽いのが特徴。遮音性に優れており、高い耐震性・耐久性を持つ。 |
このうち、木材を使う工法は「板張り」と、ウッドパネルを使った「サイディング張り」の2種類です。木材の種類はさまざまですが、なかでも以下の樹種が一般的です。
スギ・焼杉
日本だけに自生している樹種で、柔らかく加工しやすいのが特徴。コストは比較的安価で、数ある樹種の中でも、もっともポピュラーな木材です。秋田杉や吉野杉など、ブランド化されているものもあります。
色合いはさまざまで、辺材は薄く明るい黄色、芯材は淡赤色〜黒褐色です。上に向かってまっすぐに成長する性質があります。一方、傷がつきやすいため、塗装など定期的なメンテナンスが必要です。
なお、表面を焼いて炭化させる「焼杉」という技法も古くから知られています。炭化層が塗料の代わりとなって板の劣化を抑え、防腐性を高めます。焼杉は非常に耐久性が高く、瀬戸内海地方では古くから家の外壁材として利用されてきました。
ヒノキ
ヒノキは、非常に優れた耐久性と爽やかでリラックス効果が高い香りが特徴です。芯材は淡赤色で、辺材は白色に近い色合いで、絹のような滑らかな手触りを感じられます。
また、伐採後は約200年にわたって、圧縮や曲げに対する強度が増していく性質があります。水に強く腐りにくいため、古くから神社仏閣の建材として重宝されてきました。
なお、ヒノキを製材用としてまっすぐに育てるためには、間引きや枝打ちなどの丁寧な手入れが必要です。時間と手間がかかるため希少性が高く、高級木材として広く知られています。
イペ
ブラジル・ペルーなどの南米を代表する樹種で、非常に硬く、ねじれや反りが出にくいのが特徴です。優れた耐久性を活かし、公共施設のウッドデッキや桟橋、ボードウォーク、外壁など、さまざまな用途で使用されています。その性能の高さから、「ウッドデッキの王様」とも呼ばれています。
カラマツ
カラマツはスギよりも強度が高く、粘り気があるのが特徴です。さらに、樹脂を多く含むため、耐水性や耐久性にも優れています。辺材は黄白色でナチュラルなイメージですが、心材は褐色で境目がはっきりしています。
植林されたカラマツは成長が早く、木材として利用できるまでの期間が短いです。若いうちは繊維が未成熟で、乾燥時にねじれやすい性質があるため、これまで住宅用の木材には不向きとされてきました。近年では、脱脂や乾燥技術の発達により、建材や家具など、幅広い用途で使われています。
レッドウッド
レッドウッドは木材として取り引きされる際の通称で、正式な学名は「セコイア・センペルヴィレンス」です。アメリカのオレゴン州南西部からカリフォルニア州にかけて分布しており、高さは70〜80m、直径は最大で4.5mにも達する、世界的によく知られる巨木です。
年輪の密度が高く、曲げや圧縮に強いうえ、腐りにくく耐水性にも優れています。そのため、屋外の遊具やベンチ、外壁材、ウッドデッキなど、屋外用途で広く利用されています。
チーク
チークは、マホガニー、ウォールナットと共に世界の三大銘木といわれている樹種です。耐久性が高く、美しい木目が特徴的。経年変化で色みが深まり、高級感のある落ち着いた風合いを楽しめます。
さらに、天然の油分「タール」を多く含んでいるため、水に強く、抗菌や防虫性も優れています。外壁の木材にも適していますが、ヒノキ同様に希少性が高く、価格も高額です。
外壁に木材を使用するメリット・デメリット
外壁に木材を使用するメリット
外壁に木材を使用するメリットは、「デザイン性に富んだオリジナルの家に仕上がる」「素材がなくなる心配がない」の2つです。
外壁の仕上げ材はさまざまで、なかには木の模様に見せかけたサイディングパネルもあります。しかし、木ならではの風合いは工業製品には出せません。
例えば、木の手触りや、時間とともに変わっていく色合い・質感は、木の種類や経年によって異なります。自然を身近に感じられる、他とはちょっと違う特別な住まいを実現できるのは、外壁に木材を使う最大のメリットです。
また、張り替えが必要な場合でも、素材が無くなる心配がありません。さらに部分的な張り替えも可能なので、維持しやすいのも木材の魅力です。一方、工業製品は新しいデザインが出ると廃番になる場合が多く、同じ材料で張り替えできない可能性があります。
外壁に木材を使用するデメリット
外壁に木材を使用するデメリットは、「コストが割高」「定期的なメンテナンスが必要な場合がある」「安全面への配慮が必要」の3つです。
板張り外壁は、サイディング張りやモルタル塗装に比べると割高なため、予算オーバーしてしまう場合があります。コストを抑えたい時は、スギやカラマツなど比較的割安な樹種を選んだり、壁の一部分だけアクセントとして取り入れたりするのもひとつの方法です。
また、木材の外壁は、雨によるカビや腐食、割れ、反りなどが起こりやすいほか、紫外線による色あせや、シロアリなどの害虫による被害が発生しやすいデメリットがあります。
これらのリスクを避けるためにも、塗装・防腐剤の塗布など定期的なメンテナンスや耐水性や防水性が高い木材選びが必要です。
さらに、木材は火に弱いため、外壁に使用する場合には安全面に十分配慮する必要があります。特に、防火地域・準防火地域・法22条区域のいずれかに該当する場合には、外壁に使用する木材の種類や工法が制限されます。
木材の外壁はどれくらい持つ?メンテナンス時期の目安
板張り外壁の耐用年数は、30年〜50年といわれています。ただし、住んでいる地域の環境に合った材木を選ばないと劣化を早める可能性があるため注意が必要です。
特に、雨や日差しがあたる場所は、塗装や木材の交換など定期的なメンテナンスが必要です。また、木材外壁に使用する塗料は5年に一度は塗りなおすようにしましょう。
木材の外壁がおすすめの方
木の外壁の魅力は、なにより木目や温もりを感じられることです。外壁に使用する木材にはさまざまな種類があり、経年変化による風合いを楽しめます。
経年変化による色あせや汚れも、木ならではの味わいを引き出してくれます。木の特性を活かし、年月を重ねるごとに風合いが深まり、愛着が湧いてくるでしょう。
個性的な外観にしたい方、多少の費用はかかってもナチュラルな雰囲気の家づくりをしたい方に最適です。
まとめ
ここまで、外壁に使用する木材の種類について解説しました。
木材を使用した外壁は、デザイン性が高く、環境に優しいのがメリットです。ただし、コストやメンテナンスの必要性など、デメリットに感じる点もあるため注意しましょう。
また、外壁を長持ちさせるためにも、見た目だけではなく、耐久性や耐水性に優れた木材を選ぶことが大切です。ぜひ本記事で紹介した「外壁に使う木材の種類・特徴」を参考に、理想の家づくりを目指しましょう。
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